衝撃的だった「ポンピドゥー・センター傑作展」
私にとって「美術館」は、特別な存在ではなくて、身近にあって、常に自分の中にあるものです。なかでも上野公園(東京)にはたくさんの美術館や博物館が集まっていて、東京都美術館がいいなと思うのは、特別展もあれば公募団体展もあり、いろんなジャンルの展覧会を一堂に見られることです。これからもいろいろな展覧会を見ていきたいし、美術との接点があまりない人にも美術館の存在がもっと身近なものになってもらえたら嬉しいですね。
美術の作品と出会うことは、世界がどんどん広がるのを実感します。現代美術では、自分の中で考え方への影響も大きいんです。今の私の考え方をつくってくれたのも、美術の作品との出会いだと思います。私自身、「アイドルだから」と固定的に決められてしまうのがあまり好きではないんです。だからこそ、そういった壁をどんどん破っていきたいという思いもあります。楽曲や歌割りとダンスを除いた、表現の部分は自由な表現が任されています。私にとって美術作品を見ることは、歌やダンスを通して幅広い表現にもつながっています。
一年を通していろいろな展覧会を見に行きますが、昨年夏に開催された「ポンピドゥー・センター傑作展」との出会いは、本当に衝撃的でした。展示の構成がこれまでに見たことのない手法で驚きました。時代ごとに作品が並んで展示され、どういう作品の中で生まれてきた作品なのかがわかりました。新しいことに取り組んだという部分が注目されることの多いデュシャンの作品は、時代の中で見ていくと普通におもしろいことだったのかもしれない。こういった視点から見ないと、歴史の年表や文章だけではわからないことも多いんだなと思いました。それを体験することができたのがとても衝撃でした。
東京都美術館では、もう一つ驚いたことがあります。展示室で、小さな女の子がホワイトボード(とびらボード)に一生懸命に絵を描いているんです。しかも、結構上手に描いていて。美術館でこういう光景ってあまり見る機会がなかったので驚きました。そういう経験を子どもの頃に美術館で体験するのもいいなと思ったし、そういうことが美術館でできるのもいいなと思いました。そうそう、美術に関する雑誌や資料がたくさんある、美術情報室もとっておきのポイントです。
日本の美術館でおもしろいなって思うのは、企画の部分。今回の“ポンピ展”のような企画です。今までにない視点から見られるとおもしろいと思うし、今まで見たものと全然違う見方ができます。“ポンピ展”の展示ではチャレンジされたとお聞きしましたが、そういう展示をこれからもどんどん見たいです。でも、多くの方が見るときは、もっと違う視点でわかりやすいような見方があるのかもしれません。でもそこは、私が上手に広めていくお手伝いができたらいいなと思います。
(聞き手:進藤美恵子/東京都美術館 広報担当)