写真:賀来 千香子

賀来 千香子 女優

profile
東京都出身。女子美術短期大学部卒。学生時代から、雑誌『JJ』などでモデルとして活躍し、1982年ドラマ『白き牡丹に』で女優デビュー。以降『男女7人夏物語』『ずっとあなたが好きだった』『誰にも言えない』『七人の女弁護士』などの話題作に出演。近年では『女取調官』シリーズ、『新ヤメ検の女』シリーズで主演を務め、主演舞台『しあわせの雨傘』ではコメディに挑戦し、好評を得た。2017年3月4日(土)~4月2日(日) 明治座、2017年4月12日(水)~4月28日(金) 博多座にて、舞台『細雪』に出演。

極上の刺激とインスピレーションに期待

 開館90周年、本当におめでとうございます!

 

 東京府美術館から東京都美術館へ、その歴史と共に建設、改修と変遷を遂げ、今もなお、私達を魅了し続けて下さる東京都美術館に、感謝の気持ちを抱かずにはいられません。

 広大な上野の地を進み、豊かな緑に囲まれた重厚なレンガ調の特徴的なタイルの近代的な建物。球体のオブジェと戯れる親子を微笑ましく見ながら、赤、緑、黄、青とカラフルな窓や椅子に、軽やかに進化している現代の美術館を感じます。

 

 エントランスを入り、早くもミュージアムショップに心惹かれながらもゆったりとしたホワイエを進み、今回『ゴッホとゴーギャン展』を鑑賞させていただきました。私は女子美卒ではありますが、恥ずかしながらゴッホとゴーギャンにここまで深い繋がりがあるとは知りませんでした。写実主義を経て、バルビゾン派、日本の浮世絵などの影響を受け、偉大な画家達がポスト印象主義へと、それぞれの理想を求め、高みを目指し、尚も揺れているその姿に感銘を受けました。

 

 特に印象的だったのは、作風がわずか数カ月で明るい色彩に変化したゴッホの自画像の2点と、「1世紀後の人々に幻の出現と目に映るような肖像を描けたらと望んでいる・・・」とメッセージを残した、色彩の鮮やかなコントラストを用いた《若い女の肖像》。それから《ゴーギャンの椅子》というゴッホの作品です。幸せな頃のゴーギャンへの敬意を感じます。

 

 そして、何よりも私の胸を打ったのは、アルルでの二カ月の共同生活から二人が別れ、ゴッホ亡き後、ゴッホが愛したひまわりの種を蒔き、咲かせ描いた《肘掛け椅子のひまわり》。今回の最後の展示物です。ゴッホのひまわりが黄色とするならば、このゴーギャンのひまわりはオレンジ。その花器の緑の深く複雑な美しい色合いに、二人にしか分からない孤高の道のりと愛を感じ、私の気持ちも、切なさの中に何ともいえない温かなものが流れ、今回のこのオマージュ展がとても感慨深いものとして、締めくくられました。

 

 以前拝見した『バルテュス展』も実際のスイス、グラン・シャレのアトリエを再現し、作家の愛した品々も共に展示してくださり、より画家の息吹を共有する事が出来、大変感動致しました。他にも行列をなし話題となった『若冲展』、『モネ展』など、選りすぐりの展示を続けていらっしゃる東京都美術館。

 どうぞこれからも私達に、極上の刺激とインスピレーションを与えていただきたいですし、何よりも、“本物”を鑑賞する事の大切さ、“本物”を体感する事の尊さをぜひ! 御指南いただきたいと思っております。今後も期待していますし、これからも楽しみに通わせていただきます!

 

 心を込めまして・・・☆

 賀来千香子

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