写真:小日向 えり

小日向 えり 歴ドル

profile
1988年生まれ。奈良県出身。横浜国立大学教育人間科学部卒業。歴ドル(歴史アイドル)の草分け的存在。信州上田観光大使の他、関ヶ原観光大使や会津親善大使、NHK大河ドラマ「真田丸」オフィシャル応援勇士も務めている。さまざまなメディアやイベントを通じて、女性ならではの視点で歴史の奥深さ、おもしろさを世に広めている。初詣は毎年、真田信繁戦死の地である安居神社に参っている。近著には『いざ、真田の聖地へ』(主婦と生活社)がある。

おひとりさまデビューの思い出の地

 歴史をオモシロくわかりやすく伝える、歴ドルの小日向えりです。好きな歴史上の人物は、呂蒙、真田昌幸、石田三成、土方歳三。

 私が愛してやまないのは歴史だけではありません。

 好きな画家は、エドガー・ドガ、グスタフ・クリムト、モーリス・ユトリロ。2年前パリを訪ねたのも、ドガの作品を多く所蔵するオルセー美術館が1番のお目当てでした。

 休日はアート仲間と美術館巡りに繰り出します。最近では、瀬戸内海の直島へ、現代アートをめぐる旅に出かけたりと、歴ドル、実は美術もけっこう好きなんです。

 

 さて、東京都美術館の1番の思い出は、なんといっても“生誕300年記念 若冲展”。若冲人気で人が殺到し、待ち時間は最高で、5時間! 行列の途中に給水スポットが出現するなど、まるでテーマパークの人気アトラクションだと話題となりました。

 若冲は私も大好きな画家です。今年は若冲生誕300年ということで、全国の若冲作品の展示情報を、昨年からチェックしていました。

 若冲展は、若冲好きの女優、村井美樹ちゃんと一緒に行こうと約束していました。

 いざ、若冲展が始まると、大行列のニュースが! 若冲、いつの間にこんな人気に? まるで応援していたアイドルが売れっ子になってしまったような、嬉しいような寂しいような気持ちになります。

 

 その日は「待ち時間が3時間以内だったら並ぼう」と話し合い、列の最後尾で待ち合わせ。「平日だし大丈夫でしょう」と高を括っていた私。甘かったです。美術館の入り口近くでタクシーから降ろしてもらい、行列の先頭から最後尾まで歩くと想像を超えた大軍勢!「一体、どこまで並んでいるんだろう!?」。だんだんと面白くなってきて笑いがこみ上げてくる。この列は、永遠に続くのではないかという気さえしてきます。

 友人と話しながら並ぶ人、ひとりで、本を読みながら並ぶ人。おのおのの待ち時間の過ごし方を観察するのも興味深いです。

 これだけ並んでも、待ってでも見たい、若冲の人気、貴重な作品が公開されるという今回の若冲展の凄さを目の当たりにしました。

 友人と落ちあい、待ち時間のプラカードを確認すると「210分待ち」の表示が。今回は諦めて別々の日に行くことになりました。

 その後も、東京都美術館に足を運びますがその日も、待ち時間が長く、次の用事に間に合わないため断念。

 

 そして、あれよあれよと若冲展、なんと最終日になってしまいました。その日はテレビのお仕事で、「今回は縁がなかったか」と諦めかけていました。が、そこで奇跡が!

 その日は江戸時代をテーマにしたお仕事で下町を巡っていました。最後のロケ場所が上野。しかも予定より早く終わったのです! マネージャーさんが「若冲展の待ち時間、70分だよ!」と教えてくれました。

 上野解散というのも、何かの巡り合わせか。私は若冲に呼ばれているんだ! 歩きまわって疲れた足は、若冲展へ向かっていました。

 70分待ちの表記があったものの、実質40分ほどで入れました。若冲の作品を見ると疲れを忘れ、夢中になりました。《鳥獣花木図屛風》にため息。今まで見たことなかった宮内庁所蔵の《動植綵絵》の全30幅に大感動! 途中、感動で目に涙をたたえ、見ていた絵が歪みました。

 よく考えたら、寂しがり屋の私。ひとりで美術館に行ったのは初めてでした。気になった絵を見に戻ったり、自分のペースで気ままに作品を鑑賞するというのも良いものですね。

 東京都美術館は、おひとりさまデビューの思い出の地となりました。

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