美術に目覚めるきっかけとなった場所
どーもこんにちは、アートテラーのとに~です。最近はおかげさまで、取材を受ける機会が多くなりました。その時に必ずと言っていいほど質問されるのが、「一番好きな美術館は?」というもの。実は、ここだけの話ですが、その答えは何パターンか用意してあります。いろんな美術館さんとの付き合いがありますので、その理由はお察しください(笑)
でも、「一番思い出に残る美術館は?」と質問されたならば、その答えは一つ。「東京都美術館です」。僕が美術に目覚めるきっかけとなった場所、それこそが東京都美術館なのです。
話は、僕が大学4年生だった頃に遡ります。当時の僕は、週4で映画館に通うほどの映画好き。バイト代はすべて映画代に消えていたほどです。ちなみに、美術には全く興味なし。美術館には一度も足を運んでいませんでした。
そんなある日、中学校時代からコンビを組んでいたお笑いの相方が、イタリアの短期留学から帰国。ウフィツィ美術館で美術に感化されてきた彼は、会うなりこう言いました。「これからは美術の時代だ!アッチ(←僕のことです)、美術館行こう!」「・・・いや、行かない。映画代がもったいないから」。すると、相方は、「俺が交通費とチケット代を出してあげるから行こうよ」と一言。「じゃあ、行ってもいいよ」。
というわけで、千葉に住んでいた僕らは、電車に乗って“栄光のオランダ・フランドル絵画展”が開催中の東京都美術館へ。初めて入る美術館の空気に、やや緊張する僕。空気を読むことを知らない相方は、展示されている絵画の登場人物のセリフを勝手にアテレコ。思わず笑ってしまいました。そのうちツッコミの僕も負けじと絵画にツッコミ。気づけば、二人で笑い合っていました。美術館って楽しいじゃん!そんな気軽な気持ちで絵画に向き合ってみると、笑いを狙っている絵画(特に風俗画)も少なくないことに気が付きました。美術そのものも楽しいじゃん!
そして、会場のラストで出合ったのが、フェルメールの《画家のアトリエ(絵画芸術)》。当時の僕は、フェルメールの“フェ”の字も知りませんでしたが、向き合った瞬間に背筋に電流が走りました。世の中には、こんな素晴らしいものがあったのか!
かくして、10本分の映画を見たくらいの感動体験をし、すっかり美術の虜となってしまいました。この時に僕が感じた美術の面白さを、一人でも多くの人に伝えたく、その後、お笑いのコンビを解消し、アートテラーという職業を立ち上げ、なんとかかんとか今に至っています。
もし、東京都美術館であの展覧会を観ていなかったら、たぶん今頃・・・まっとうな人生を歩んでいたことでしょう(笑)。一人の男の人生を大きく変えた東京都美術館。その責任を取って(?)、100周年、200周年と、これからも歩み続けていただきたいと思います。そして、第2、第3のアートテラーを生み出していただきたい。
最後になりましたが、90周年、本当におめでとうございます!